双生モラトリアム
「僕には体が弱いにーちゃんがいるんだ」
彼は、そう話してくれた。
「あたしも、体が弱い妹がいるの……だから、家には誰もいないんだ」
私がそう話すと、彼はうんうんと頷いた。
「うん、僕も同じ!うちには親が母さんしかいないから。母ちゃんが仕事でいないし、兄ちゃんは入院中だし……だから、寂しいよな」
「うん……」
子どもだけど、いろいろな感情や思いはあった。これでご飯を買いなさい、と書き置きとともに置かれた500円玉。
好きなものを食べられる嬉しさより、寂しさと孤独感が辛かった。
だから、少しは人の気配がある公園で遊ぶ。一人ぼっちじゃない、と思いたくて。
そんな時に出会った男の子は、私と同じ寂しさを抱えていた。
きっかけは野良猫でも、お互いにシンパシーを感じていたと思う。
家には誰もいない夕方、約束はしなくても何となく公園に集まってた。
もちろん、私が行かない日も彼が来ない日もある。
やがて、彼は私を「ゆーちゃん」と。私は、彼を「いっくん」と呼んでた。
そして、1年くらい経っていっくんは「僕、医者になる!」と宣言した。
「医者になって兄ちゃんと、ゆーちゃんの妹助ける!体が治れば、4人で遊べるだろ?医者になったら金持ちになって僕の母さんが働かなくてすむようになるし。いいことばっかだろ?」
子どもらしい、荒唐無稽な話だった。
だけど、彼より幼かった私は無謀とかわからなくて。同じく素晴らしいものと信じて疑わなかった。
「うん、なら!あたしは動物のお医者さんになる!この前タマを助けられなかったし……」
「うん……いいんじゃない?」
ちょうど、二人で世話した猫が病気で亡くなって歯がゆい思いをしたばかりだった。二人で、将来を決めて。それを叶えよう、と幼いなりに決意をしたはずだった。