双生モラトリアム

「舞、やめなさい」
「なんで?ほんとは、母さんだって邪魔だし面倒だって思ってるんでしょ!?」

お母さんが止めに入るけど、舞が強い口調で言い返すと途端に押し黙った。

畳の上でしゃがんで掃除してるからお母さんの顔は見えないけど、見なくてもわかる。困ったような、それでいて後ろめたそうな表情をしてるに違いない。

あの時と、同じに。

私が、舞に強く言い返すことができない一番の理由。

「……捨ててくる」

割れた陶器を纏めて紙に包むと、ビニール袋に
入れてギュッと口を縛り危険物の箱に入れるためベランダに出た。

すると案の定、舞にドアを閉められた上にカギをかけられ、ベランダから中に入ることができなくなった。

「今すぐ消えて、二度と帰ってこないと誓うなら。荷物まとめるために開けてあげるわよ」

クスクスと笑う舞の肩越しにお母さんが見えたけど、こちらを見てもくれない……。

(……やっぱり……お母さんも私と一緒に住むのはほんとは嫌なんだ……)

きっと、お金がないから渋々一緒にいるだけだろう。お金があればおそらく別居してるはず。

(……わかってても、やっぱりキツいな……)

舞の悪戯は予想できたから、ベランダに来る前になるべく厚着をして、小さな水筒とお菓子をポケットに入れておいた。

脇に抱えて隠し持っていた膝掛けを全身に巻いて、なるべく雪がかからないように体を抱えて座る。

(私も……出ていくべきかもしれないな……)

好かれていたと自惚れるつもりはないけど、最低限の情はあると思ってた。だけど……やっぱりお母さんからも嫌われてたんだ。

抱えた膝に顔を埋めて、人知れず涙を流した。

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