双生モラトリアム

(……寒い……)

少しずつお茶を飲んで暖をとったけど、水筒の中はもう空。お母さんはもう眠ったのか、灯りが消えてる。舞の声が聞こえたから、今日は泊まるのかもしれない。

寒さのあまりにか、ガタガタと体が震えてきた。だるさも増して熱っぽい……。

きっと、舞が帰る朝になるまで家の中には入れてもらえないだろう。

(……舞が、私を憎むのも仕方ないかもしれない……)

樹とのこと……6年目にもなれば、うっすら気付いてるかもしれない。それに、私が樹とこんな関係になるきっかけは……結局、秘密にしていたはずの事実を彼に知られていたからだ。

(結局、異物が、本物の家族になれるはずもないのにね……)

これは、厚かましく家族でいようとする私への罰。だから甘んじて受けるしかないんだ。

それでも、辛いものは辛い。

全身が氷のように冷たく感じ始めたころ、ガラッと隣の引き戸が開く音が聞こえて。また立花先生が隣のベランダから顔を出した。

「遅くなってすみません。これ、良かったら使ってください……っと!落ちる!!」

立花先生の勢いがよすぎたのか、差し出された袋がこちらへ飛んできて私の足元にポトリと落ちた。

ビニールバックの中身を見ると、長靴と厚手の靴下に分厚いコート。それと簡易なブランケットと手袋に帽子にカイロまで入ってた。

「さすがに雪見でも、寒そうですよ。あと、これも」

次に差し出されたものは、フードジャーに入った熱々のお汁粉とポットのあったかいお茶。

「僕も、雪見茶付き合いますよ」

ニコニコと笑顔で、フードジャーのお汁粉を振って見せてくれた。
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