双生モラトリアム
うっすら積もる白い雪に赤い南天の実を見ていると、イチゴが乗った生クリームのショートケーキを思い出す。
(そう言えば……最後にケーキを食べたのいつだっけ)
私が子どものころから、誕生日を祝われるのは舞だけ。
後からお父さんはこっそりと小さなケーキとプレゼントを私にくれた。
“ごめんな、唯。こんなことしかできなくて”
“ううん、いい!お父さんありがとう”
二人だけで、毎年ハッピーバースデーの歌を歌った。いつかお父さんと、年の数だけローソクを立てられる大きさのケーキで誕生日をお祝いするのがささやかな夢だった……。
それは、お父さんの死で叶わない夢になってしまったけれども。
(今はもう、私の誕生日を祝うどころか……気づいてくれる人はこの世に一人もいないけど)
ふふ、と笑う。自虐的な笑み……。
(家族……私に……できるのかな……)
誰でも、いい。
私を、私だけを。私だから必要としてくれる家族が欲しい。
こんなに、世の中には人がたくさんいるのに……私はひとりぼっちだ…………。
眩しいほどキラキラ輝く大陽の下には、まだ未来が信じられる学生たちや若いカップル。赤ちゃんを連れた若い夫婦……。
耐えられなくなってカーテンを閉めると、布団を頭まで被ってきつく目を閉じた。
(泣くな……泣くな!泣いても何も変わらない……泣いたって現実には誰も助けてくれないんだから)
まぶたの奥が痛いほど熱い……熱のせいだ。頭痛もきっと風邪のせい。
(……家には帰りたくない……あの場所は……本当は私の居場所じゃないんだから……)