双生モラトリアム
ようやく思い出して、震える指で立花先生のケータイ番号をタップする。
(仕事中かもしれない……でも……番号で気づいてくれたら……)
頭の片隅で迷惑だろうということは承知で、祈るような気持ちでコールをタップした。呼び出し音がスピーカーから鳴り、どくどくと心臓がうるさくなってくる。お願い、出て!という願いも虚しく、“留守電サービスに接続します”という機械的なアナウンスが聞こえた。
「ゆ、唯……です……ゴホッ!せ、先生……私……今マンションに……た、助け……」
毎日叫びすぎるせいで、喉ががらがらだ。しゃがれたかすれ声で懸命に喋っていると、途中でピーッという音とともにスマホの画面が真っ暗になった。
どうやらバッテリー切れのようで、何度ボタンを押しても起動することはなかった。
(じゅ、充電……なんとかしないと。先生が気づいても繋がらない……)
確か、樹はベッドサイドでスマホを充電していたとぼんやり思い出し、ふらつきながらも急いでベッドルームに戻る。
無防備なことに充電アダプターはコンセントに差しっぱなしで、すぐに充電できると喜びいさんでケーブルの差し込み口をスマホの充電口にさそうとしたけど……。
「え……合わない?」
差し込み口の穴とケーブルの端子の形状が、明らかに違う。
スマホを持ったことがない私は、機種によって充電端子が違う場合があることは知らなかった。
(そんな……!これじゃあ充電できない……どうしよう……)
焦って他にないか探しても、それらしいものは見当たるはずもなく。
そんな日に限って樹が早く帰ってきたから、咄嗟にベッド下にスマホを戻しておいた。