双生モラトリアム
ベッドの布団に潜り込み、寝たふりをする。
どうせ、またいいように弄ばれるだけだ……とギュッとまぶたを閉じて、守るように両手で自分を抱きしめた。
(……なんで……樹は……私の話を聞いてくれないの?舞を裏切って平気なの……?)
ギシッ、とベッドのスプリングが軋んで、彼が腰掛けたと知った。また、抱かれるんだ……と絶望的な思いでいたけど。
不思議と、樹は何もしてこなかった。
いつもなら性急に布団を剥ぎ取られ、組み敷かれるのに……。
(…………?樹……どうしたの?)
なんだか様子が違う。うまく言えないけど、いつもの彼の熱を感じない。急き立てられるような焦りというか……それが消え失せているように感じた。
身動ぎさえ躊躇われる静けさの中、樹はポツリと静かに呟いた。
「……唯……すまない……オレは最低だ……幼なじみと偽り……ずっとおまえを騙して……それでもこんな卑怯な手を使っても手に入れようとした……本当の“いっくん”……は……別人なのにな……」
はは、と乾いた笑い声は、なんだかとても自虐的な……悲しみに満ちたものだった。
「だが……オレは、唯……おまえだけだ。オレにとっておまえだけ……どんなに恨まれても憎まれても、おまえを手放すつもりはない……結局、オレも憎み蔑んだ父と同じだ……愛人だったオレたちの母を囲った父と」
そう吐き捨てるように呟いた樹はやっぱり布団を剥ぎ取って、そのまま私を抱いた。
けれど……いつもより、いくらか優しい気がした。
そして、とてつもなく悲しい瞳をしていた。