双生モラトリアム
「ご両親の事故は、スピードの出しすぎによる無謀運転と聞いている。君はその場にいなかったし、まったく無関係。
舞の病弱は生れつきであって、君は原因にすらならない。僕らの引っ越しだって、父さんが僕たち兄弟を改めて引き取りたい……と申し出たから。ほら、どこに君が関わっているのかな?」
立花先生は淀みなく私の言葉の矛盾を指摘すると、にっこり笑って「はい、次は?」と言うから。何だかからかわれているようで意地になる。
「スーパーではトラブルばかりだし……学校でも舞に不愉快な思いを……」
「お客さんや他の従業員が理不尽過ぎると伝え聞いてるよ。君は唯一外部の人間なのに、責任や仕事を押し付けられすぎじゃないかな?
舞も、仮に姉に対してひどい仕打ちだったよね。君の友達候補を取り込んだりして孤立するよう仕向けていたんだから」
どこまで知っているんだろう?という疑問は頭を過ったけど。それより、私は立花先生が離れてほしくてとんでもないことを口走ってた。
「だって……わ、私は……本当のお母さんを殺して生まれたのよ……!!私を産んでくれたお母さんは、そのせいで死んだ……だから……今のお母さんに押し付けられて……わ、私は……本当の家族じゃないのに……ずっと家族のふりしてきた厚かましい女だよ!そのために夫婦喧嘩もあったりお父さんだって死んで……舞にだって嫌な思いをたくさんさせたのに!こんな……幸せになるはずだった家族に不幸を呼び込んだ異物。幸せになっていいはずない!!」
ぽろぽろ、と堪えきれなくて涙を流した。
「それに……立花先生だって気づいたでしょ?私は……妹の婚約者……樹と5年半もセフレをしてきたの……舞への優越感で気持ち良かった……こんな穢れた醜い女……誰にだって相応しくない!お願い……立花先生。本当に私のためを思うなら、もう関わらないで!こんな……人間として最低な女……不幸がお似合いなの!!」