双生モラトリアム
改めて見ても、ひどい鬱血の痕だらけ。ますます醜い身体になった私に、失望すればいい……そう思ったのに。
「唯」
私の名前を優しく呼んだ立花先生は、ふわりと触れるだけの優しいキスをしてきた。
そして外にいた看護師さんに何かを告げてドアを閉めると、私の肩を掴み軽く押して身体を優しくベッドに沈めた。
「……今の君の体の状態を考えると、あまりよくないんだけど」
「な、何が……?」
彼は突然白衣を脱いぐと、うんと頷く。
「君を助けるために、僕は今から君を抱くよ」
「えっ……助け……?」
信じられなくて目を瞬くと、立花先生はベッドに腰かけて私の顔を覗きこんだ。
「僕には、君の話が“助けて”って叫びに聴こえたんだ。わざと僕を傷つけ遠ざけようとしたことも……君は、優しいんだよ。優しすぎて深く傷ついてる……だから、上手く自分の言いたいことを言えてない。温もりを求めることが醜いなんて、誰が言えるのかな?」
「……っ」
もう、限界だった。
今まで我慢してきた分、堰を切ったように涙が溢れてくる。
「……ほんとは……家族がほしいの……」
「……うん」
「誰でもいい……誰かにそばにいてほしかった……温もりがほしかった……」
「……大丈夫、全て僕があげるから。唯、だから……」
それからは、言葉にならなかった。
立花先生……颯は、嫌な記憶を上書きするようにとても優しく私を抱いてくれて。
生まれて初めて、セックスが幸せを感じるものだと……私は知った。