双生モラトリアム
料理中は辛くて、何度も吐いた。
ご飯が炊ける甘い匂いさえ、吐き気が込み上げてきて。自分の部屋に駆け込んでベッドに横になる。
普通のお茶もダメで、水かスポーツドリンクしか口にできない。サラダなら食べられるかも、と朝ごはん用にレタスとトマトを出せば、青臭くてダメだった。
(ダメ……気持ち悪い……)
吐ききったのにまた何度もえづいて、吐きたくても吐けない。とにかく横になってひたすら目を瞑るしかなかった。
「唯、大丈夫か?」
「あ……」
いつのまにか寝ちゃってたらしく、目を開けば颯が心配そうに顔を覗きこんでる。
「だいぶ顔色が悪い……悪いものでも食べた?」
違うと言いたくて、一生懸命首を横に振った。
「違うの。なんだか魚が生臭かったり野菜が青臭く感じて……お米が炊ける匂いでも気持ち悪く感じたの」
「……吐いた?」
「う、うん……吐いても吐いても気持ち悪くなってて……」
「食欲は?」
「ない……かな。とにかく気持ち悪くて食べられるものがなくて……」
颯はなぜか、私に次々と質問をしてくる。そして、とんでもない問いかけをしてきた。
「……唯、2月の生理はきちんと来てる?」
「あ……」
颯に指摘されて初めて、生理のことに気付いた。
確か……3週間ぶん残っているうちに新しいピルをもらいに行ってたけど。その時には色んなことがあって忘れてて。
1月は生理に似た出血があったけど。2月は……。まだ、だ。
(というか……私……もう1ヶ月以上……ピル……飲んでない)
今さら過ぎる現実に、頭からさあっと血の気が引くのを感じた。