双生モラトリアム
まさか、と思った。
こんな私に、こんな奇跡的な出来事が起きるなんて。信じられないし、まるで夢でも見てるようだ。
でも、と私はフワフワした気持ちがすぐに現実に戻る。
(どうしよう……私……颯に相応しくないのに……それに……樹との子ども……裏切りの証。こんな罪深い私が幸せになれるはずない……)
「だめ……ダメだよ、颯。だって……お腹の子どもは……樹の……だから、あなたが関わる必要はないの。この子は……私が」
「樹の子って勝手に決めないで?」
颯は、意味がわからないことを言い出した。
「えっ……」
「妊娠週数からは樹の可能性も否定できないよ……でもね」
颯はにっこり笑って、とんでもないことを言い放つ。
「バレンタイン、僕は病院で唯を美味しくいただいたからね。この子は最高のプレゼントだ」
「え……えっ……?」
バレンタイン……病院……そして、いただいた……。そのキーワードで思い出せる出来事はひとつしかない。
「……っ!」
自分でも顔が真っ赤になったことがわかるくらい、カッと頬が熱くなった。
「そ、颯のバカ……エッチ!チカン!!」
「チカンて……ひどいなあ」
ぽりぽりと頬を掻いた彼は、フッと優しい笑みに変わる。
「時期から考えても、その子は僕の子だよ……もし樹の子でも、僕は構わない。だって、唯の子どもという事実に変わりはないんだからね。
僕も、覚悟を決めて避妊なしで君を抱いたんだ……二人の一生背負うつもりでね。だから、安心してついてきて欲しい。みんなで一緒に幸せになろう」
自信がありそうなくせに、どこか不安そうな目をする彼は、確かに“いっくん”だ。
だけど……
いまの彼は、立花颯。
私にとって……最愛のひとだった。