双生モラトリアム

すでに用意したお茶を出して私が颯と並んで座ると、お義母さんは「ありがとう、唯」と控えめに微笑んでくれて。ああ、これでよかったんだと思う。

私が、お義母さんと離れることは正解だった。この2ヶ月……お義母さんはお義母さんでどうにか生きているんだろう。程よい距離を取って接すれば、もっとよい新しい関係を築ける……そう確信した。

まずは颯の挨拶から始まった。

「こちらこそ、改めてご挨拶を……立花颯と申します。本来はこちらから出向くべきところを、わざわざご足労いただきましてありがとうございます」
「いえ、娘が幸せになるんですからね……いくらでもお伺いさせていただきますわ」

お義母さんはにっこりと笑う。本当に嬉しそうだ……実の娘の舞の結婚が決まった時と同じに。

「お義母さん……今まで心配かけてごめんなさい。でも、私決めたの……家を出る……みんなから離れる……って。だって、私は……本当の家族じゃなかったから」
「…………」

お義母さんはひと口お茶を飲んで喉を潤すと、ふう、とひと息ついて伏し目がちに言った。

「……やっぱり……唯、あなた……気づいてたのね……」
「うん、お義母さんとお父さんが事故の日の前夜に……喧嘩してるの……聞いたから」

そう告げると、お義母さんはハッとした顔をして、手にした湯のみを落とした。彼女の足元にじわじわと広がるお茶は、そのままお義母さんの動揺を見ているようで。

「……唯……ごめんなさい……あの時……私はどうかしていたの……すべてがうまくいかなくて……それをあなたのせいにしてた……。最低な母よね……でも……私も……本当は憎かったの……。賢さんの本当の愛を得て逝った姉も、その娘のあなたも!!」

お義母さんは、テーブルに伏せるようにして叫ぶ。それは……長年秘められた想いの発露だった。

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