双生モラトリアム
「そうかもしれない……でも、お義母さんは私を育ててくれた。実の娘じゃないのに……今まで頑張って私をここまでしてくれた。私は、感謝してる……ありがとう、冴お母さん」
私がそう想いを告げると、お義母さんはハンカチを目頭に当ててすすり泣いた。
「唯……ありがとう……こんな腑甲斐無い親なのに……お母さんと呼んでくれて……」
「うん、だから……私は敢えて冴お母さんと舞と離れたい。距離をとって付き合った方が上手くいくと思う……きっと舞も、その方がストレス減るよね」
私が舞の話をすると、お義母さんはため息をついた。
「舞……あの子もね……ちっちゃい頃はお姉ちゃん!ってあなたの後を追い掛けるくらい仲良しだったのに……何があんなにあなたを嫌うようになったのかしら……」
どうやら、お義母さんも心当たりがないようだったけど。ひとつ思い出したように話してくれた。
「そういえば……あなた達が小3のころ、近所の子が入院してたわね……ええと、そう。そーくんと言ってたかしら……舞はその時泣いてたわ“そーくんがいなくなっちゃう!”って……しょっちゅうお見舞いに行ってたわね。そーくんは本当に舞と仲良しだったから、退院したら東京に行くってのがよほどショックだったみたいね」
それを聞いた颯は、「それ……僕の兄です」と呟いた。
「え、そうなの……そういえば……そーくんは婚約者の樹くんによく似てたわね……」
「はい……僕と兄はよく名前を交換し過ごす遊びをしていたんです。唯とも団地の公園で知り合いました」
颯がそう教えると、お母さんはそうだったのね……と頷いた。
「舞が、こう言ってたことがあるわ……“そーくんが唯の事しか聞いてくれない”って。すごく不満そうにしてたからよく覚えてる」
もしかしたら、舞の態度が変わった原因はそれかもしれないなと思えた。