双生モラトリアム
そのうち、雪が大きくなって顔にぶつかってくる。冷たい雪が顔に叩きつけられ、痛いし前がよく見えない。耳がちぎれそうなくらい冷たくて痛い。
「あっ……!」
慎重に進んでいたつもりだけど。薬局の駐車場からいきなり突っ込んできた車があって。視界不良もあり、車輪がぶつかってその場で転倒した。
「……!!」
がしゃん、と結構派手な音が立って、私も自転車ごと横倒しになりアスファルトに叩きつけられた。
(痛い……!!)
一瞬、動けないほどの痛みが全身に走る。けれど私がうずくまっていたのに、車はそのままスルーして走り去っていってしまった。
しばらくして体が動かせるようになり、自転車をなんとか起こしておそるおそる乗ってみる。全身に痛みはあったけれど、多分軽い打撲にもならなくてそのうち痛みは引くだろうな。
顔や手は擦りむいたけど……別に、大した違いはない。
ただ……
「つっ……」
左膝が、痛い。
多分、一番ひどく打った場所だ。
自転車の運転には差しつかえないけど、歩く時は辛いかもしれない。
(占いなんて……やっぱり嘘だ)
通りがかりの人も、足早に去って誰も助けてくれなかった。
何が、人生を変える出会いだ。
私だけが、おとめ座の中で最低最悪な運勢なんじゃないか。
(出会い頭に車に衝突してひき逃げされるなんて……笑えないっての)
痛む足を庇いながら、なんとか目的地の家電店にたどり着いた。