双生モラトリアム
「双子と言えば、僕と兄はニ卵性の双子……そして、母も二卵性の双子なんです」
颯がそう言うと、お義母さんはまあ、と驚いた。
「双子が生まれやすい家系はあるみたいだけど……すごい偶然ね」
「はい……ですが、僕らの母の葵(あおい)は愛人という立場でした。双子の姉の愛(あい)が父の正妻で……叔母に子どもができなかったため、僕らは跡継ぎ候補として東京の父の実家へ……ですが、養子で後継者になったのは兄の樹だけでした」
「まあ……それじゃあ……颯さんは……」
お義母さんも経験者だから、すべてを言わなくても察したようだった。颯が捌けぐちとして叔母……義理の母に虐待されていたことを。
「はい……あまりよい家庭環境ではありませんでした。父には医大の学費までは出してもらいましたが、後はなんとか独り立ちしようと。……唯を迎えたかったので、必死に働きました」
「だから……アパートでお隣に引っ越してきたのね」
「はい……ストーカーみたいで気味悪いでしょうけど……これでもいっぱいいっぱいだったんです」
あ、照れた時のクセだ……ガリガリ頭を掻くクセ……何だかかわいく思えて、微笑ましくなった。
「あ、唯……笑うなよ……ひどいなあ……僕のことすっかり忘れてたクセに」
「ごめんなさい……でも、もう大丈夫だから……」
いつにない穏やかな雰囲気でお義母さんと過ごせた。お互いに言いたいことを言い切ったから、すっきりとわだかまりを溶かすことができたんだ。
舞も……同じようにできるかな?
でも、話さないと。
小学生以来ろくに私の言葉に耳を貸さなくなったけど……。やるだけやってみよう!
お義母さんに妊娠を伝えたら、「まあ、私もついにオバアちゃんね。元気でいなきゃ!今のパート先に自慢してくるわね」といきいきしてて。さっそく孫馬鹿の傾向が見えて可笑しかった。
(冴お母さん……孫って認めてくれてありがとう……)
この子を、産もう。お義母さんのひと言で力強く後押しされた気がした。