双生モラトリアム
それからしばらく穏やかな日々が続いた。
私も徐々につわりが楽になり、定期検診で順調に発育が確認されてた。
ただ、双子だった……と知った時には驚いたけど。 どうやら二卵性の双子らしく、初診の時はもう一人の胎嚢が上手く確認できなかったみたいだ。
颯も「パパは頑張るからな!」と張り切って働いてくれてるし、安定期に入ったらスーパーでパートとして復帰しようと考えてた。
でも……まだ、颯のプロポーズには答えを返してない。
まだ、舞と話せてないから。
すべてを解決してすっきりしたいのに、舞と連絡がつかない。お義母さんが仲介してくれているけど、私の名前を出した途端に頑なになってしまうらしい。煩わしいのか、アパートにも来なくなったと言ってた。
(こうなったら直接舞に会いに行こうか……)
どんどん時間が経つほど、取り返しがつかない気がする。お義母さんからは、舞が結婚について一切話をしなくなったと聞いてたし。樹がどう動くのかわからない……。
(もう、私のことは諦めて舞だけを見てくれればいいけど)
そういった私の願望は、あくまで身勝手な願い。私は忘れてた……あまりに穏やかな日々に浸りきってしまって。
現実は、残酷なまでに願いと反する事態になることが多いというのに。