御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
君島先輩が私の腰のあたりをポンと励ますように軽く叩く。
「まぁ、あんなのが出てきちゃったら焦る気持ちもわかるけどね。せっかく初めて誰かを好きになったんだから、噛みしめながらゆっくり進んでいけばいいよ。急いだところでたいていのことは上手くいかないから」
ニコッと私に笑顔を向けた先輩が、後ろを歩いている渡さんに視線を移す。
「それにしても、渡くんが意外にガンガンいくからびっくりしたわー。女全般にヘラヘラしてるタイプかと思ってたのに結構強い態度とるのね」
話題を振られた渡さんは、ふっと笑いながら答える。
「いや、俺のことあれだけ見下した女相手にヘラヘラはできないでしょ。俺は友達とか先輩以外は、俺をちやほやしてくれる女にしか優しくしない」
「……それはそれでちょっとどうかと思うけど」
君島先輩が呆れたように笑っていると、渡さんが私の隣に並ぶ。
「春野。とりあえずあいつに報告しておけよ。手紙のこともあの女のことも。あいつのせいで春野の周りに色々起こってるのは事実なんだし、責任とらせた方がいい」
いつも表情豊かで笑っていることの多い渡さんが、真面目な顔で言う。
責任という言葉は重すぎる気がして私が答えられないでいるうちに、君島先輩がうなずく。