御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


言ってからハッとした。

東堂さんにとってはただの雑談のつもりだったかもしれないし、それをそんなおおげさにとられても気持ち悪く感じるかもしれない。
だから、そんなつもりはないとフォローしようとしたのだけれど。

慌てて視線を向けた先で、東堂さんが優しく目を細めていたので声が引っ込んだ。

「じゃあ、次はひなたの番だな」
「え?」
「俺だけひなたのことを知らないんじゃ、不公平だろ。そういえば、普通、見合いの席では色々聞き合うんだよな。まだ時間はあるし、どうせなら、ネットから質問引っ張ってきてお互い答えていくか」

東堂さんのそんな提案から、海に向かう車中、そしてカフェラテのおいしいカフェの店内では、質問合戦となった。

「次いきます。『もし、あと一日で地球が滅亡するとしたら何をして過ごす?』……私は、たぶん普通に過ごします。特別なことって思い浮かばないので……あ、でも髪をショートにしてみたいかも。肩より短くしたことないので」
「へぇ。まぁ、でもたしかにひなたは性格も雰囲気もふわっとしてるしショートのイメージはないかもな。似合うとは思うけど。俺は……俺もなにもしない。しても仕事休むくらいだな。もしかしたら地球が滅亡しない可能性もあるし、博打打つ気にはならない」
「あ、確かにそうですよね……。その可能性を考えていなかったです。えっと、じゃあ次。『あなたのとっておきの〝避難スポット〟は?』」
「……何問か前の『お気に入りのジョークは?』って質問のあたりから思ってたんだが、それ、どこから引っ張ってきた? 質問があまり一般的じゃない気がする」

くっくと喉を鳴らして笑いながら言う東堂さんに、そういえばおかしな質問だったかもしれないと私も笑みをこぼす。

東堂さんと一緒にいる時間が楽しくて、カフェラテに描かれた猫が可愛くて、胸がドキドキしっぱなしだった。


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