御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


自分のことを話すのは苦手でも、質問形式ならそこまで身構えずにできるため、終始楽しいティータイムとなり、気持ちが温かくなっていた。

そろそろカフェを出ようという話になり、席を立ったのは時計が十七時を回った頃だった。
太陽はもう海の下へと姿を消していて、その名残だけが空の端っこに残っている。

車に乗り込んだところで、東堂さんがいくつかの紙袋を後部座席から取り、私に差し出した。

「これ、フランス土産。チョコとジャムとバター。有名らしいし、ひなたは朝はパンだって言ってたから使えるかと思って選んだ」
「ありがとうござ……重たいですね?」

受け取った紙袋はかなりの重さがあり、驚く。

「適当に君島さんとか渡に配れるように多めに入ってるんだ」
「そうなんですね。ありがとうございます。先輩も渡さんも喜ぶと思います。……すごく可愛いですね」

紙袋の中に入っていたジャムに思わず頬が緩む。
六角形の瓶には蓋を覆うように水玉模様のラッピングがしてあった。ぱっと見十個近くあるジャムは、イチゴとブルーベリーと……あとは、マーマレードかラフランスかなと予想する。オレンジ色がとても綺麗だった。

高級そうな箱に入っているチョコや丸い木箱に入っているバターも本当に配れるくらいの数が入っていて恐縮しながらもお礼を言って受け取ると、東堂さんが「あと、これ」ともうひとつ小さな紙袋を差し出した。

オレンジ色が鮮やかな紙袋に書かれているロゴを理解した途端、びっくりして東堂さんを見た。

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