御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
ぐったりとしている渡さんは、それでも気丈に東堂さんを睨むように見た。
「今日のこれはたまたまだし。色々疲れがたまってたところに飲んだからであって、元はすげー強いんで。東堂さんにも負けないと思いますけどね。どうせ上品な酒しか飲んだことないんだろ」
渡さんは、またところどころため口で、しかも失礼なことを言っていたけれど、以前のようにハラハラはしなかった。
東堂さんがこれくらいのことでは気分を害さないということを、一緒に過ごした時間のなかでもう知っていたから。
だから、聞き流すだろうなと思っていたのだけれど。
「こいつ、この辺に寝かせておいても大丈夫だろ。マウントとりにくるくらい威勢がいいし、放っておいても問題ない」
渡さんを冷たく切り離すようなことを言うので、本気じゃないとはわかっていても苦笑いを浮かべて止めた。
「それは可哀相ですから」
「まぁ、ひなたの同期だっていうしちゃんと送るか。おい、住所は」
立っている東堂さんを、渡さんが恨めしそうに見る。
不服そうな顔だ。
それでも住所を口にするってことは、自分ひとりで帰宅するのは無理なほどアルコールが回っているのだろう。
東堂さんが渡さんに肩を貸し、車の後部座席に乗せる。それを手伝ってから、私も助手席に乗り込んだ。