御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


「酔った勢いで言うわけじゃないけど、俺、アンタより先に春野の魅力に気付いてましたから。可愛いとも思ってるし、性格だってちょっと心配になるくらい純粋で一緒にいて癒されるし、なにより俺が守ってやりたいって気持ちにさせられる」

最後「御曹司だろうと誰だろうと、簡単に渡すつもりはないからな」と告げた渡さんに、一拍置いてから東堂さんが口を開く。

「覚えておく」

それを聞いて、気に入らなそうに顔を歪めた渡さんが膝から崩れ落ちたので、また東堂さんが部屋の中に運ぶこととなったのだった。


渡さんを無事部屋に収めてから私を送ってくれた東堂さんは、マンション専用の駐車スペースに車を止めた。
東堂さんはシフトレバーをパーキングに入れ、サイドブレーキをかけたあと、「あいつ、ひなたにとってどんな男?」と私を見る。

「渡さんですか? いい人……だと思います。優しくて明るくて、いつでも周りに人が集まってるような人です」
「優しくて明るい、か」
「何年か前、渡さんが新年度用の手帳を買いそびれて落ち込んでたんです。毎年同じ物を使ってるのにその年は忙しくて買えずにいるうちに、手に入らなくなっちゃったらしくて」

シンプルで仕事でも使いやすいタイプの手帳は、人気が高くてすぐ売り切れてしまうため、ネットで買う人も多いらしい。
渡さんが愛用しているのも、ビジネスマンから支持されているものだった。


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