御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない

「ネットで調べて大きな書店に電話確認したら、一軒だけ在庫があるお店があったので、メモして渡さんに手渡そうと昼休みに営業部に行きました。そしたら、渡さんの周りに人が集まっていて、それぞれおすすめの手帳のプレゼン大会みたいなことになっていて……渡さん、とても楽しそうにしてました」

仕事ではないプレゼンは、渡さん以外の人もみんな楽しそうにわいわいしていた。だから、そこに私がメモを持って行ったら水を差す気がした。

「私がしゃしゃり出ることじゃないと思って、そのメモは捨てたんです。それなのに、その日の帰り渡さんがそのメモと欲しがってた手帳を持っていて『ありがとう』って。私が話しかけられずにメモを捨てたことに気付いてくれてたみたいで……なので、とても優しくて気遣いのできるいい人です」

『春野のおかげで無事ゲットできた』
ニッと屈託のない笑顔で言う渡さんに、驚いて……嬉しかったのを覚えている。

組んだ腕をハンドルに乗せた体勢で話を聞いていた東堂さんが、「俺には今の話、ひなたがいい子って内容に聞こえたけど」と笑うので、慌てて否定する。

「えっ、いえ、そんなつもりは全然……」
「渡に関しては若干気持ち悪い気もするが……まぁ、ひなたが優しいと捉えてるならそれでいい」

そこで一度言葉を切った東堂さんが私をじっと見て聞く。

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