御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
「仕事が終わらなくて。最近なんか忙しいんですよね。だから今週は無理そうで、来週も半ばくらいまでは調整つかないかも」
「そんなに忙しいの? あ、もしかして、彩佳さんのとこと契約結んだのと関係あるとか?」
「あ、まぁ、それもあるかなって感じです」
終始タジタジの渡さんに、君島先輩は「ハッキリしないわね」と眉を寄せる。
渡さんは要領がいいから、他の営業の人に比べて残業は少なかったのに珍しい。
渡さんが話す様子をずっと見ていても、今までだったら何度も合っていた目が一度も目が合わなくて、なんだか違和感が残った。
東堂さんが出張に行ってから一週間が経った。
その間、特になにも問題はなく……というわけにはいかなかったので、少し困っていた。
ちょうど、東堂さんが出張に行った当日から、帰宅途中視線を感じるようになった。
電車の中でも、最寄駅からマンションまでの道でも、なんとなく誰かに見られているような気がする。
けれど、それを察知して振り向いても誰もいないし、実質的な被害はないのが気持ち悪い。
あの手紙の犯人だろうか……と考えながら電車に揺られていた時、また視線を感じた。
正体不明の視線や気配を感じ続けて、今日で八日目。
今度こそは……!という思いで勢いよく振り向くと、バチッと視線がぶつかった。
仕掛けたのは私の方なのに、あまりにしっかりと目が合ったものだから驚いているうちに、私を見ていた犯人が背中を向ける。