御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


渡さんがそんなことを言いだすので、「あ、でもそれは私が悪いので」と割り込む。

私はこの会社に父、昭文さんの伝手で入社した。つまり、コネ入社だ。
就職活動はしていたし、他に内定をもらった企業もあったけれど、そのどの会社よりもこの会社の方が大きかったし、福利厚生なども整っていたのが決め手となった。

『いい? 最終的にどんな場面でもひなたの味方になってくれるのは、ひなた自身とお母さんだけだからね。お母さんがもしいなくなったら自分にかかるお金は自分で稼がないとダメよ。男なんか頼っちゃダメ』

これまで男性関係でなかなか苦労していた母が口癖のように言っていたことがインプットされているせいか、就職する際にも〝なるべく大企業に〟〝将来安泰のしっかりした企業に〟というのが常に頭にあった。

だから、コネを使うことに罪悪感はありながらも自分の未来の生活のためにこの会社に入社したのだけれど、やっぱりそれを知った周りは面白くはなかったのだろう。

でもそれは仕方ないことだ。
「私がズルしたんですから」と言うと、渡さんはわからなそうに眉を寄せた。

「別にコネ使うのってズルじゃないと思うけど。それだってある意味実力のうちじゃん。それに、コネ使って入ったくせにたいした仕事もしないでサボってるなら話も別だけど、春野の場合はすげぇ頑張ってるわけだし」

チラッと君島先輩を見ながら言う渡さんに、先輩が顔をしかめる。

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