御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


彩佳さんのことを言っても、東堂さんは驚いた様子は見せなかった。
電話口で『俺の身内が迷惑かけて悪い』と謝られてしまい、慌てて口を開く。

「いえ、大丈夫です。彩佳さんにもなにか事情があるんだと思いますし……」
『事情があったとしても、ひなたを怖がらせていい理由にはならない。俺の方から彩佳に話して謝らせるから、時間をもらってもいいか?』
「あの、本当に大丈夫なので……その、強く責めるようなことはやめてくださいね?」

東堂さんが激しく怒鳴る姿は想像がつかないし、冷静な人だから実際にもそんなことはしないだろうけれど、男性の怒鳴り声は女性にとってはとても怖い。

だから……と思い言った私に、東堂さんは小さくため息をついた。

『ひなたがそう言うなら。でも、しっかり話はつけるし謝らせる。それがひなたを付け回した彩佳の義務だ』

東堂さんがハッキリと言う。
彩佳さんは東堂さんのいとこだし、身内の話にこれ以上は口を挟めない。

だから引くことにして、「帰国、日曜日でしたよね」と話題を変える。
せっかく声が聞けたのだから、不穏な話だけで終わらせるのは嫌だった。

『ああ。午後着だから、夜には会える』

それまでとは違い、少し甘さを含んだ声で言われ、胸の奥がむずむずする。


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