御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


土曜日の十五時。洗濯物を取り込んでいて、トラックのエンジン音に気付いた。
ベランダから下を覗くと、宅配便のトラックがマンション前に止まったところだった。

洗濯物を入れた籠を持ち部屋に入ったところでインターホンが鳴ったので、東堂さんのお土産が届いたのだと思い、印鑑を持ち玄関のサムターンを回す。

そして、「お疲れ様です」と言いながら顔を上げ……そこにいた知らない男性に驚く。
十代後半から二十代前半に見える男性は白いTシャツに黒いジャージの上下という服装で、間違っても宅配業者じゃないのはたしかだった。

ドアホンを確認してから出なかったことを反省しながら「あの、どちら様でしょうか」と声をかける。

学生なのか長めの黒髪で中性的な顔立ちをした男性は、にっこりとした綺麗な微笑みを浮かべた。
前髪が目にかかっていても、顔が整っているのがわかった。

「春野ひなたさん?」
「はい。そうですけど……」

フルネームで呼ばれたことに少しの気味悪さを感じながらうなずいた私を、男性がじっと見る。
値踏みするように上から下まで動いた視線に、いつかの彩佳さんが重なった。

たった一メートルほどの場所からじろじろと見られ居心地の悪さを感じていると、気が済んだのか男性が笑う。


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