御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


「晃成はさ、生まれた時から東堂家のひとり息子として毎日プレッシャー浴びながら育ったんだよ。苦しくても逃げられない上、道を外れることも許されない。わかる? 肩にどれだけの重荷が乗ってるか。それでも踏ん張って、その辺にいるやつらなんかの何百倍も努力して、なんとか今まできたんだよ」

絞り出すような声は、まるで、准さん自身が今、その立場にあって苦しんでいるかのように聞こえた。

心拍数がまだ落ち着かない中、今のは本当に東堂さんのことを言っていたのだろうか……と少し疑問に思う。

「なのに、結婚しただけで、なんの努力もしてこなかったおまえみたいな女が当たり前な顔して晃成の隣に立つとか絶対おかしいだろ。晃成とおまえとじゃ、立つ舞台自体違うんだよって話。そもそも、晃成がおまえなんかを本気で相手にするわけがないだろ。わかんない?」

きつく睨んだ准さんが「なんとか言えよ」と、すごむ。
さっきのことがあるので、怖さは感じていたけれど、いつまでも黙っているわけにもいかず、覚悟を決めて顔を上げた。

「准さんは、東堂さんのことがすごく好きで、守りたいから、こうして私に忠告しにきた……と解釈すればいいですか?」

落ち着け落ち着けと自分自身に繰り返す。
准さんは「は? 当然じゃん」と片眉を上げた。

春にしては冷たい風が、准さんの黒髪を揺らしていた。


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