御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


「でも、東堂さん、噂通り素敵な人でしたよ。背が高くてビシッとしていて、顔立ちもすごく整っていて……オーラがあるっていうのかな。うわぁ……って思わずため息が出ちゃうような人でした」

一昨日のことを思い出しながら言うと、渡さんが「へぇ。俺より?」と聞いてくる。
その笑顔はキラキラとしていてアイドル顔負けにすら見えた。

「もちろん、渡さんもカッコいいと思います」と言った私の隣で、君島先輩が面白くなさそうに言う。

「自信過剰って言ってやりたいのに、そうとも言い切れないのが腹立たしいよね。今年のバレンタイン、私調べによると渡くんがもらったチョコの数、社内でトップ3に入るし。ホワイトデーとかどうするの? もう三日後だけどちゃんと準備してる?」

たしかに、渡さんは見た目がいい上に性格的にもフランクで親しみやすいからよくモテる。チョコも相当数もらっていたみたいだし、そのお返しってなると大変そうだ。

「まぁ、その辺は抜かりないですよ。さすがに店頭じゃ数が揃えられなそうだったんでネットでまとめて注文しました」
「ネット注文か。さすがにあの数じゃそうなるよね」

君島先輩の発言で話題が終わったところで、渡さんが私に笑顔を向ける。

「ってことで、そんなカッコいい俺が傷心の春野に今日は奢るよ。定時ちょっとすぎるかもしれないけど、待ってて。どこでも連れて行くから」
「え、いいですよ、そんな――」

お見合いがうまくいかず私が落ち込んでいると思ったのか、そう誘ってくれる渡さんに遠慮していた時。自動ドアの開く音がした。

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