御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


『本当はあの時全部話せばよかったのはわかってたの。でも、実の弟だし、なにか起きる前に私が止められればおおごとにならずに済むんじゃないかって思って……身勝手な保身であなたを怖がらせた』

彩佳さんは目にたまった涙を必死にこぼれないようにしていた。

『晃成もなにか勘づいてるらしくて、海外出張の前にあなたにボディーガードをつけようと手配してたの。それを私が裏から手を回して断った。だって、もしも准が捕まったら……あの子がもうやり直せなくなると思ったから』

もしかしたら東堂さんは、それにも気付いていたのかもしれないと思った。
だからこっそり渡さんにボディーガードをお願いしたのかもしれない。

『准を、東堂家の恥にはさせたくなかったの。そんなことになったら、あの子、本当に手遅れになる』

そう涙を溢れさせた彩佳さんと話して、もしも准さんが私の前に姿を現したら連絡を入れる約束を交わした。

そして、翌日の今日、准さんが現れたというわけだ。

「あんたが晃成の雇ったボディーガードに捕まったりしたら大変なことになる。だから私が裏から手を回して断って、代わりにひなたをストーキングするみたいにつけたりして……ヒールで走り回るこっちの身にもなってよね! 本当に腹が立つ!」

怒りを爆発させた彩佳さんが「言い分は?!」と声を張り上げる。
けれど、准さんがなにかを言う前に、彩佳さんの平手が准さんの頬にヒットしていた。

パン、と乾いた音が響く。

< 161 / 184 >

この作品をシェア

pagetop