御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
地下の駐車場に車を停めたあと、エレベーターに乗り込んだ東堂さんは〝23〟の数字を押した。
たしか、このマンションは二十四階建てで、最上階はラウンジやバーが入っているという話だったはず……と思い出し、頭がクラクラしてくる。
実質最上階ということにもだけれど、23階まで一気に上がるエレベーターにもクラクラした。
いくら高級マンションでも、この独特の浮遊感は同じらしい。
「東堂さんは毎日、この高さを上がったり下がったりしているんですね」
私には想像もできない生活だなぁと感心して呟くと、東堂さんは「そうだな」とおかしそうに笑った。
「上の音を気にして暮らすのも嫌だから、募集が始まったときに最上階を選んだけど、実際住んでみたら上の音も気にならないし、これくらい天井とか壁が厚ければ下の方の階でも問題ない。ひなたがそっちの方がいいならそうするか」
数百円の買い物でも選んでいるような気軽さで言う東堂さんに慌てて口を開く。
「え、いえ、あの、東堂さんのお部屋なので私の意見は気にしていただかなくて大丈夫です……というか、絶対に気にしないって約束してください」
この調子だと本当に引っ越ししかねない気がして釘を刺す。
東堂さんはおかしそうに「わかったわかった」と笑っていたけれど、なんだか信用しきれなくて怖かった。