御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
東堂さんが指定したお店は、とてもオシャレなレストランだった。
私の会社の最寄り駅前という場所は、きっと私が行きやすいように東堂さんが考慮してくれたのだろう。
エレベーターで三十六階まで上がったフロアにある店内。床は黒いタイルが敷き詰められていて、ところどころにダウンライトがあり、間接照明の役割をしていた。
カウンターテーブルと、テーブル席の間にまっすぐに延びる通路の先の壁は、ほぼ一面がガラス張りとなっていて夜景が楽しめる造りになっている。
まさか……と思いながらも東堂さんの後に続くと、一番奥の席に通された。きっと、店内で一番いい席だというのが私にもわかり、居たたまれなくなりながら、君島先輩に服を借りられてよかったと心底思った。
東堂さんの誘いが突然だったので、当然、私はそんなつもりで出勤していなかった。だから、着てきたのは白いノーカラーブラウスに、黒のパンツ、くすんだ水色のカーディガンという、無難なもの。
白いパンプスは一応ヒールだったからそこはいいにしても……と思いながら君島先輩に相談したら、眉を寄せられた。
『先輩、私、この格好で大丈夫だと思いますか……?』
『大丈夫……じゃないかも。ちょっとカジュアルすぎる……あ、私のワンピース貸してあげようか。急な誘いがあった時用に一式ロッカーに入れてるから。サイズも同じようなもんでしょ』
そう言って先輩が貸してくれたのは、袖がふわっとしているデザインのピンクベージュのワンピース。首元のVネックもそこまで深くなく丈も膝丈なので、上品に見えとても助かった。