御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
私から東堂さんに連絡を入れたのは、レストランに連れて行ってもらってから三日目の金曜日のことだった。
あんな豪華な食事をご馳走になってしまったので、なにかお返しがしたいと思いメッセージを送った。
『今週末の土日、もし東堂さんの都合がつく時間があれば私の部屋に招待したいと思っているのですが、迷惑でしょうか』
お返しはなにをすればいいのか、迷った末に出した結論は、手料理だった。
外食を選べば、東堂さんに連れて行ってもらったお店と同等か、もしくはそれ以上が要求される。お返しなのだから、普段私が使っているようなリーズナブルでおいしいお店ではダメだと思った。
東堂さんはきっとそんなことは思わないだろうけれど、私の気持ちの問題だ。
でもそんな高級店でご馳走するのは私には無理なので、だったらなんだろうと考え抜き消去法で残ったのが手料理。
レストランで食事をした際、東堂さんがほとんど外食で済ませていると話していたのを思い出したからだ。
それと同時に、あの告白のことを思い出してしまい、顔が熱を持つ。
返事に困っている私を見かねた東堂さんは、急がなくていいと言ってくれた。
『そんなに身構えなくてもいい。最初から恋人になれるとも考えていない。一緒の時間を過ごしていくなかで、ひなたの気持ちが恋愛になったら教えてくれればいいから』
私を安心させるような微笑みでそんなことを言ってくれる東堂さんがとても大人に見えた。
年齢は六歳しか離れていないのに、そういったことの経験値の差は相当ありそうだ。