御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


掃除機の電源を切り、納戸にしまう。
換気のために開けていた窓を閉めてから、空気清浄機のスイッチを押した。

時計を確認すると、十一時。
東堂さんは十一時半頃来る予定だからと逆算して洗濯や掃除をしていたけれど、スケジュール通り終わりホッとする。

就職を機にひとり暮らしを始めたワンルームはあまり広くない。なので、せめて綺麗にしておこうと張り切って片付けだしたはいいものの、もはやなにが正解なのかがわからなくなってしまい、整理整頓は途中で諦めた。

深追いするのは危険だ。余計に散らかってタイムアップを迎える可能性があるので、清潔ならもういいことにする。

「よし」

最後に指差し確認をして部屋を確認したあと、エプロンに手をかけた。


東堂さんがインターホンを押したのは、十一時三十三分。予定通りの到着時間に、なんだか嬉しくなりながらサムターンを回し玄関を開ける。
春の心地いい空気が、開けたドアからふわっと入り込んだ。

「こんにちは。道に迷わなかったみたいでよかったです。ここ、少しわかりにくいみたいで、たまに宅配便のドライバーさんから電話が入るので」
「ああ、たしかにわかりにくいかもな。あらかじめひなたが間違えないように道順を説明してくれてたから助かった」

当たり前に呼ばれた名前に、胸がトクッと反応する。
男性に名前で呼ばれるのは初めてなので、低く艶のある声で私の名前を呼ばれると、なんとも形容しがたいむずがゆい気持ちになった。

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