御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


東堂さんは、白いロンTにベージュのパンツを合わせ、上には紺のスプリングコートを羽織っていた。とても洗練されて見えるのは、東堂さん自身が持つ魅力のせいだろう。

スラッとした体形や長身も相まって、まるで雑誌から飛び出してきたモデルみたいだと思った。
私が知らないだけで、カッコいい一般人って普通にいるものなんだろうか。

そんなことを思いながら「どうぞ、あがってください」と用意してあったスリッパを示すと、東堂さんは「おじゃまします」と言い、靴を脱いだ。

そして、一歩入ったところで「これ」と持っていた箱を渡される。

「俺はあまり甘いものは食べないからよくわからないが、ここのはうまいって有名らしいから。ひなた、好きだろ」

受け取った箱に書いてあるのは、テレビでも特集されるような有名店のロゴだった。私は食べたことがないけれど、君島先輩もおいしいと大絶賛していたお店だ。

「好きです。大好きです。……でも、どうしてわかったんですか?」

お見合いの席では会話という会話はしなかったし、その後に会ったのだってたった一度だけ。
甘いものが好きだなんて話題にはならなかったのに……と考えていると、東堂さんが笑う。

「コースの最後にデザートが出てきたとき、顔が緩んでたから」
「えっ」
「あれ見てわからないヤツはいない」


< 36 / 184 >

この作品をシェア

pagetop