御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
言い訳になるけれど、あのレストランのデザートはすごかった。
大きく平らな藍色をしたお皿の上に、まるで天の川みたいに粉砂糖で曲線が描かれていて、その両岸に小ぶりのケーキがいくつか置いてあった。
イチゴソースのかかったレアチーズケーキも、抹茶のスポンジと濃厚な生クリームが何段にも重なったケーキも、クリームとカスタード、それにフルーツがふんだんに中につまったチョコのロールケーキも。
ついでに言えば、すっきりとした後味のバニラアイスも砕かれてキラキラしたコーヒーゼリーも、全部が見た目がいいだけじゃなく味もすごくすごくおいしかった。
おいしいものをおいしいと食べるのが悪いことだとは思わない。でも、なんだか気を遣わせてしまった気がして申し訳なくなった。
「すみません……。ここ、人気店なのにわざわざ……」
「いや、俺がひなたに食べさせたかっただけだから」
目を細めた東堂さんが、ポンと私の頭を撫でる。
男性にそうされるのは、記憶している限り初めてだった。
突然の出来事に少し呆けてしまっていると不思議そうな顔をされるので、慌てて「あ、座っててください」とソファを指し示す。
東堂さんが腰掛けたのを確認してから腕まくりをし、もうほとんど出来上がっている料理の仕上げにとりかかった。