御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


あらかじめ聞いていた東堂さんのリクエストは、オムライス。さすがにそれだけというわけにもいかないので、かぼちゃのポタージュとサラダも作った。

男性がどれだけ食べるのかがよくわからなかったけれど、東堂さんに無理して完食させるのは申し訳ないので、私も食べきれる量にした。

部屋に誰かを招いて食事を振舞う機会は今までなかったため、それを想定して選んでいないローテーブルは、六枚のお皿を並べるとぎゅうぎゅう状態だ。

オムライスをひと口食べた東堂さんが「うまい」と言ったのを聞いて胸を撫で下ろし、私もスプーンを持った。

「手際よく作ってたし、普段から料理してるんだな」
「ひとり暮らしですから。でも、仕事で疲れていたりすると買ったもので済ませたりもするので、結構サボっちゃってますけど」
「手間がかかりそうだけど、これも作ったのか?」

かぼちゃのポタージュを飲みながら聞かれ、うなずく。

「はい。何度かこしたりするから多少は……でも、オムライスが全然時間かからなかったので大丈夫ですよ」

メッセージでリクエストを聞いてから思った。
もしも難しい料理を言われたらどうしようと。

自分で言いだしておきながら、しかもリクエストを聞いておきながら、できませんとは言えない。
だから緊張しながら返信を待っていたのだけれど、返ってきた答えはオムライス。

表示された文字相手に思わず「え?」と声が漏れるくらいには拍子抜けした。


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