御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
運転席に座った東堂さんは、窓の外を見るようにそっぽを向いていた。
そういえば、私が触っている最中やけに静かだったし、もしかしたら今の時間が退屈だったのかもしれない。
そう思い謝ろうとしたけれど、東堂さんの耳が赤くなっていることに気付いた。
不思議になって「あの……?」と声をかけると、東堂さんがゆっくりと私に視線を向ける。
右手の肘を窓とドアの淵につき、口元を覆うように頬杖をついた東堂さんは、私をじっと見て言う。
「俺もひなたに触られるのは恥ずかしいみたいだ。今、気付いた」
バツが悪そうに眉を寄せて言う姿がなんだか無性に可愛く思えて胸の奥がキュッと掴まれる。
ドキドキしながら「じゃあ、おそろいですね」と言うと、おかしそうに笑われた。
楽しく会話をしながら食事を終え、送ってもらう車の中で東堂さんが思い出したように話しかけてきた。
「そういえば、インスピレーション八割って話だけど」と切り出される。
「あ、レストランに向かう途中に話したことですよね」
『でも、考えてみると今までもたいがいのことがそうだったかもしれない。最初に自分が感じ取った印象で物事決めてきた気がする。インスピレーションが八割、それ以外が二割ってとこだな』
なにに対しても第一印象というか直感を重視しているって言っていたことを思い出していると、ハンドルを握ったままの東堂さんが言う。