御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


「あの、なので、参考までにおふたりの意見を伺いたくて。いったい、どうなったら恋なんですか?」

ふたりは顔を合わせてから、もう一度私に向き直る。
先に口を開いたのは先輩だった。

「んー……当たり前だけど、相手が自分以外の異性とイチャイチャしているところを見たくないとか。やきもち焼けるかどうかはスタンプカードの項目に絶対入ると思う。渡くんは?」

話題を振られた渡さんが、「うーん」と首をひねりながら言う。

「ひとりでいる時に、ふと思い出して気持ちがあったかくなったらっていうか……こう、ほこほこするっていうか。〝癒される〟と〝ドキドキする〟の合間みたいな感情がわく感じ」
「ほこほこ……」
「なにか見た時に、やたら思い出すっていうのもある。ああ、これ好きそうだなぁとか。こういうの似合いそうだな、とか。会えない時間に、よくその子のこと考える」

君島先輩とはまた違う角度からの答えに、なるほど……と思う。
たしかに、好きなら自然とその人のことを考える時間が増えるものかもしれない。

納得していると、一拍置いたあとで、渡さんが言う。

「あとは、臆病になる」
「臆病?」
「そう。他のヤツには何も考えずに言えることなのに、その子相手の時だけはためらう。どう思われるか気になるし、嫌われたくないから」
「つまり、こう言ったらどう思われるかな、こういう行動をとったら嫌われるかな、といちいち気にしてしまう……ということですか?」

聞き返した私に、渡さんは「そう」とうなずいてから苦笑いをこぼした。


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