御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
淡々と告げられた言葉に、キョトンとしてしまう。
唖然としている場合じゃないと思うのに、あまりに唐突すぎて何かを考えられる状態じゃなかった。
ただ、東堂さんがこの縁談をあまりよく思っていないのはそんな頭でもわかり……気持ちがしぼんでいく。
高級料亭のとても立派な和室。木製のテーブルも揃いの椅子も重厚感があり、しっとりとした部屋の雰囲気もとても素敵だ。
そんな部屋で〝どんな方だろう〟とわくわくしながら座っていた三十分前の自分が嘘みたいに、悲しい気持ちでいっぱいになった。
何も言えずにいる私に、東堂さんが言う。
「父親の話だと、酒の席で盛り上がって決まった縁談らしい。どういう事情でも俺は構わないし、おまえがさっき俺が言ったことを理解した上で結婚するなら、動機が資産目的だろうとなんだろうとどうでもいい」
最後「どうする?」と聞かれ……目をしばたたく。
開始五分で次から次へと条件やらなにやらを並べられ、放心状態だった。
でも、いつまでも答えを待ってもらうのも気が引けて精一杯頭を働かせた。
この縁談に何も望んでいないのがひしひしと伝わってくるような東堂さんの目を見て口を開く。
「あ、えっと……東堂さんがこのお見合いになにを望んでいるかは理解しました……と、思います」
声を出したら、やたらとズキズキと痛む胸に気付く。
体に入ってくる空気が重たく息苦しさを感じるのは、きつく締めた帯のせいだろうか。表情筋が思うように動かず強張っていた。