御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


「でも、そんな風に考えていても、咄嗟の時とか感情的になったりした時に、自制が利かずに言ったり動いたりしちゃうのも、たぶん、好きな子が相手のときなんだよな。だから、恋愛感情って結構矛盾してるものだと俺は思ってる」

そう渡さんが笑うと、君島先輩が「たしかにね。わかる」と言い、口の端を上げる。

「渡くんって結構繊細なのね」

からかうような声に、渡さんは「そうなんですよ」と明るい声でうなずいた。

「俺、見た目もいいし性格もフランクだから正直モテるんです。だから女の子の扱い方とかも知ってる方だと思うし奥手ってわけでもないのに……どうも本気で好きになるとダメっぽくて」
「しかもたぶん、粘着質よね」

ハッキリ言い切った君島先輩に、渡さんが「その言い方は悪意があるでしょ、俺はただ慎重に……」と言いかけたとき、私の携帯が鳴った。

ふたりに謝ってから確認すると、着信は東堂さんからで、それを見た先輩が「呼びなよ、ここに! 私も東堂さんと話してみたいし!」とテンションを上げる。

そして、その声が電話越しに東堂さんにも聞こえていたせいで、本当に東堂さんが来る流れになり――。



「はじめまして。東堂です」

電話があってから三十分ほどで到着した東堂さんが私の隣で自己紹介すると、私の向かいに席を移した君島先輩が目を輝かせた。


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