御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


東堂さんは三十歳で、渡さんは二十五歳。
だから、酔っているせいか敬語を使わない上に語気を強める渡さんにハラハラしたけれど、東堂さんはそんなこと気にも留めていない様子で「わかってる」と即答した。

「俺が今まで仕事に比重を置いてきたのは、天秤にかける存在がいなかっただけだ。そのことに、俺自身もひなたと会って気付いた。熱量がなかったわけじゃなく、それをぶつけたいと思う相手がいなかっただけだったんだと。もちろん、仕事を優先させる場面もあるとは思うが、その後フォローするつもりだし、そうしたいと俺も思ってる」

最後に「だから、決して軽い気持ちでいるわけじゃない」と言い切った東堂さんが、私に視線を向ける。
直後、テーブルの下に置いてあった手を握られ肩を跳ねさせていると、東堂さんが口の端を上げた。

畳の上で東堂さんの指が遊ぶように私の手に絡むから声を失い焦る。

当然、テーブルの下での触れ合いは先輩と渡さんには見えていない。
私が挙動不審になっていたらおかしく思われてしまうから普通にしていないと、と思うのに……私の手のひらをくすぐるように撫でる指先にじわじわと顔が熱を持っていく。

どうしてか、すごくいやらしいことをされている気分だった。

そんな私の反応を楽しむように送られる東堂さんの眼差しに耐えきれなくなり、うつむいたとき、渡さんが声を出すからギクッと体が揺れてしまった。


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