御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
Step.1
東堂さんからジョギングの誘いがあったのは、木曜日の夜だった。
『土曜、軽く走るか。朝、車で迎えに行く』
私の趣味を覚えてくれていたことが嬉しくて、すぐにうなずいた。
「結構体力あるんだな。そうは見えないから、普通に三周目に入ったときは驚いた」
深い伸脚をしながら言う東堂さんに、笑顔で返す。
「でも、さすがに四周目は無理でした。私的に、五キロの壁が高いんです」
東堂さんが車で連れてきてくれたのは、大きな公園。真ん中に木材を使ったアスレチックエリアがあり、それをぐるっと囲むようにジョギングコースが整備されている。
一周一、五キロで、今はそれを三周し終わり、ストレッチをしているところだった。
とても雰囲気のいい静かな公園は、まるでここだけ空気の流れがゆっくりとしているようで居心地がいい。
土曜日の朝八時なのに走っている人はそれなりにいて、最近のジョギングブームを物語っていた。
駐車場はガラガラだったので、近所の人が多いのかもしれない。
月曜日に脅迫状みたいなものをもらってから、やっぱり少し滅入っていた部分はあったので、気持ちよく走れてとてもいい気分転換になっていた。
ルーティンとなっている朝のジョギングは、どこから誰が見ているかもわからない。だから怖くて今週は控えていたけれど、やっぱり体を動かすのは大事だ。
朝、日が出てからの明るい時間帯なら人目もあるし、来週からはジョギングを再開しようと決意する。