御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
「え……フランスですか? 明日から?」
「そう。販路拡大のために半月前から営業担当が行ってるんだが、予想以上に手応えがあるって報告があったんだ。だから様子見と、あと契約してる企業への顔出しだな」
海外出張なんてうちの会社では聞かないだけに驚いてすぐに返事ができなかった。
やっぱり大企業となると取引先も当たり前に海外だったりするんだな、と思いながら「どれくらい行くんですか?」と見上げると「一週間を予定してる」となんでもない顔で返される。
「一週間……」
海外なら、移動時間だけでも相当かかるから当然の期間なんだろう。
普段出張すらない私からしたら、一週間も?と驚いてしまうけれど。
でも……海外出張に行くのなら、出発前に余計なことは言わない方がいいかもしれない、とさっき出かかっていた相談を喉の奥に引っ込める。
話せば、優しい東堂さんはきっと心配してくれる。
出張でただでさえ大変だと思うのに、遠く離れた土地で心配だけさせるのは気が引けた。それに、一通手紙が入っていただけでそれ以外の被害はない。
脅迫状については、帰国した後話せばいい。
「すみません。出発の前日に私に付き合ってジョギングなんてさせてしまって……疲れてませんか?」
本来なら準備だとかの時間にあてたかっただろうと思い謝ると、東堂さんが笑う。
「いや、どうせ飛行機の中で寝るし問題ない。荷物も多くないしな」
「そうなんですね……あの、気を付けて行ってきてくださいね」