御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
私に「ああ」と微笑んでくれる東堂さんを見て、一週間会えないことを思うと寂しさを感じた。
一週間くらいなら日本にいたって普通に会えないことだってある。それでも、物理的な距離ができることは寂しい……と思いハッとする。
東堂さんは仕事だっていうのに、なにわがままを言っているんだろうと慌てて口を開いた。
暗い雰囲気でいたら東堂さんに気を遣わせてしまう。
「そういえば一昨年、両親が再婚した時に新婚旅行でヨーロッパに行ったんです。街並みがとても綺麗だったって聞きました」
「日本とはやっぱり建築が違うからな」
「私、自然の風景も好きですけど、街だとか人の気配を感じる景色も好きなので、両親の後ろに映る街並みを見てワクワクしました」
もっとふたりの世界に浸ればいいのに……と心配になるほど頻繁に写真が添付されたメッセージが届いて、呆れて笑いながらそれを見たのが懐かしい。
お母さんからも昭文さんからも個別で届くものだから、新婚旅行の一週間、私の携帯の充電の減りは異常に速かった。
そんな思い出話をしていると、私を見ていた東堂さんが目を細める。
「じゃあ、俺も写真撮って送る」
「え」
「俺が見た景色だとか風景だとかをひなたに送る」
思いもしない申し出に驚きながら「いいんですか?」と聞いた私に、東堂さんは笑顔でうなずいた。