御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
今か今かと待っていてもキスされることはなくて、恐る恐る目を開ける。
するとすぐに、まだ、鼻先がぶつかる距離にいる東堂さんとすぐに目が合った。
「やめておく」
「……え?」
「本音を言えばしたいし実際迷った。でも、お詫びでキスしても後々虚しくなるだろ。だから、いつかひなたの気持ちが追い付いてからでいい」
目を細めて私の頭をぽんぽんと撫でる東堂さんに、胸の奥がキュッと縮こまる。
東堂さんの本音と優しさにどうしようもないほど感情が膨らみ、胸から溢れ出す。
お詫びだと、たしかに私が言った。キスがお詫びになるならと思ったのは事実だ。事実だけど……でも、違う。
お詫びのつもりもあった。でも、本当はたぶん、私が、東堂さんにキスして欲しかっただけだ。
溢れかえる感情の中に、残念がっている自分を見つけ、唇を噛みしめた。
「もし、ひなたの気が済まないって言うなら、また手料理でも食わせて――」
東堂さんの腕を思い切り引き、近づいたところで唇を奪う。
初めてなので、どれだけしていればいいのかも、押し付ける加減もよくわからない。
勢いがよすぎて少しぶつかるようになってしまった。
でも、しっかりと唇同士が触れ合ってはいたので満足して離れると、目を見開いて私を見る東堂さんがいた。
その東堂さんの表情を見て、自分がしでかしたことに今さら恥ずかしくなったけれど、顔が熱くなるのを感じながら口を開いた。