御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない
「お詫びとは言いましたけど、相手が誰でもキスするわけじゃありません。東堂さんだからです。東堂さんだから、キスしたかったんです」
早口で言っているうちにますます恥ずかしくなり、それを誤魔化すようにしゃべり続ける。
「あ、もちろんこんなことが本当にお詫びになるとは思っていませんし、別の形でもしっかりお詫びはさせていただくつもり……わっ」
話している途中で突然抱き寄せられる。
元々距離が近かっただけにあっという間に東堂さんの腕のなかに収まってしまい、呆然とする。
けれど、顎にあたる東堂さんの骨ばった肩だとか、背中に回っている腕の強さだとか、服越しに感じる東堂さんの体温だとか。
そういったものにじわじわと実感が広がっていった。
抱き締められていると意識した途端に慌てだす気持ちをどうにか落ち着かせながらも、微動だにできずにいる私に、東堂さんが聞く。
「今のは、俺のことが好きだってことでいいんだよな?」
今までで一番近くから聞こえる声に、ドキドキを抑えられないままうなずいた。
「……はい」
正直、さっきまではよくわかっていなかった。
〝好き〟って気持ちが未経験の私には確信が持てなかった。
東堂さんに、人として惹かれているのか、それとも男性として惹かれているのかの違いがわからない。
……けれど。