御曹司は初心なお見合い妻への欲情を抑えきれない


「そうですね。昨日からフランス出張に行ってますし、他の予定を聞いても本当に忙しそうなので、頻繁に会うのは難しそうです」
「そうなんだ。寂しいわね」
「寂しい……というよりは、体が心配になります。東堂さんは私と会っている時、疲れた顔って全然見せないので、無理してないかなって」

君島先輩としばらくそんな話をしていると、ひとつため息をついた渡さんが「俺、そろそろ戻るね」と言う。

「はい。お疲れ様でした」
「お疲れー」

先輩とふたりして笑顔で見送っていると、数歩歩いたあと、渡さんが一度振り向く。

「春野。おめでとう」
「あ……ありがとうございます」

照れながら笑った私に、同じように微笑んだ渡さんが背中を向ける。
その背中が、いつもと違って見えたのは私の気のせいだろうか。


東堂さんは約束通り写真をたくさん送ってくれた。

レンガ造りの建物が立ちそびえる間に抜ける小道。
赤いオーニングが可愛いカフェのテラス席。
木枠が素敵なアパルトマンに、川にかかる石の橋。

それぞれが、ポンポンと断続的に送られてくるので、きっと、東堂さんが写真を撮ってすぐに私に送信してくれているんだろうとわかり、自然と頬が緩んだ。

タイムラグはあるにしても、こんなに離れていてもほぼ同じ時に同じ光景を見られていることが嬉しかった。

私を気遣ってなのか写真やメッセージが頻繁に届くので、普段、東堂さんが日本にいる時よりも彼を近く感じることもあり、なんだか不思議な気持ちだった。

もちろん、連絡はメッセージ以外にもあった。

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