能力を失った聖女は用済みですか?
第一章 聖女、失業する
ーロラン王宮北側にある神殿。

設えられた祭壇に祈りを捧げる私は……項垂れ深く溜め息をついた。
側で成り行きを見つめる神官達がざわつき、王と王子はひそひそと囁きあっている。
嘲笑、蔑み、落胆……様々な負の感情が私の背中に突き刺さる。

精霊達の声が聞こえなくなってもう三ヶ月経つ。
一体、自分に何が起こっているのか……。
私は暫し放心し、ただひたすら空を見上げた。


諸岡(もろおか)(ルナ)、当時、農業大学の4年生だった私は、ある日異世界へと召喚された。
突然目に飛び込んできた目映い光。
光が収束すると、そこは外国の城のような場所で、人形のように可愛い王子が跪き、私を「聖女」と呼んだ。
この国の名はロラン。
王政を敷く、中世ヨーロッパのような世界である。

ここでは、天災や災いが続くと、聖女を呼ぶ儀式が行われ、どこかの世界から一人、女性が召喚される。
つまり、私は「聖女」としてこの世界に呼ばれたのだ。

なぜ私が「聖女」なのか?
ただの大学生だった自分にそんな力はない!と周りに力説したけれど、徐々にその謎は解けた。
どうやら、この世界の私には、不思議な力があったのだ。

万物に宿るあらゆる精霊と会話ができ、無条件で愛され、力を貸して貰うことが出来たのである。
例えば、日照りが続けば雨を降らせ、燃え上がる炎を瞬く間に消し、突風で敵を飛ばしたり。
全ての精霊が私の友達で、味方であった。
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