能力を失った聖女は用済みですか?
第四章 聖女、奇跡を見る
アルバーダから帰還し、王都レグラザードに帰ってくると思わぬ人がやって来ていた。
アッサラームのアミード・デュケーン。
つい最近帰国したばかりの彼が、早々にシャンバラへと来たのには、とんでもない理由があった。

「突然ですが、在庫が尽きました」

アミードは祝宴の間にて、開口一番そう言った。

「在庫……何のだ?」

カイエンはポカンとしている。
その場の会合に呼ばれた私とシスルも同じ表情である。

「ルナシータです。試しに、と買ってくれた国々から、瞬く間に追加注文が入りました。もうね……バカ売れです」

「バカ売れ……なのか!?」

「バカ売れです」

アミードは表情を変えず、挨拶をするようなイントネーションで話した。
さも「当たり前」かのように、である。
そして、そのテンションのまま続けた。

「しかし、今のままでは大量生産は無理ですよね?ですので、増産体制を整えるべく、私アミード、暫くシャンバラに滞在することに致しました」

「あ、ああ。それはありがたいが、アッサラームの方は良いのか?」

「問題ありません。私がいなくても何でも出来るように手引書を作成してあります」

アミードはキリリと眉を上げた。
手引書って……マニュアルだろうか。
君主制なのに、まるで優良企業のようなシステムね……。
王が社長なら、さながらアミードは営業部長兼総務部長かな?
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