能力を失った聖女は用済みですか?
ここは一つ、人と言う文字を書いて飲もう……と手を開いた時、慌ただしく扉が開いた。

「正門より報告!ロラン一行、約30名の小隊が接近中であります!」

正門の物見の兵士だ。

「わかった。警戒を怠るな。ここに通すのは王子と隊長の2名のみ、あとは、一階広間で待機させておけとシスルに伝えよ!」

「はっ!」

カイエンの言葉を受け、兵士はすぐに踵を返し、早足で正門へと向かった。
その様子を見て、私の緊張はより一層高まった。
一体、ロランは何を言ってくるのだろう。
まだ、聖女を連れ戻すことを諦めてないのなら、何か策を考えていそうなものだけど。

それから暫くして、王宮内の気配が変わった。
たぶん……ラシッド一行が広間に到着したのだ。
ピーンと張り詰める空気が階を隔てた謁見の間まで伝わってくる。
ドキドキと煩く鳴る心臓を押さえながら待っていると、やがてシスルの声が扉の外から響いてきた。
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