能力を失った聖女は用済みですか?
「ラシッド殿。一度国に帰り国王と話し合ってはどうだ?まぁ、こちらの意向は変わらないが……」

「話し合い……?そんなものが出来れば苦労しない!」

ラシッドが突然、噛みつくように返してきた。
こんなにも攻撃的になる王子を、私は知らない。
のほほんとしたお坊ちゃんで、怒っているのすら見たことがなかった。

「どうしたんだ?声を荒らげるようなことか?」

「……」

また黙ってしまったラシッドに、今度は私が問いかけた。

「王子。ロランで何かありましたか?」

すると、縋るようにこちらを見ながらラシッドが訥々と言った。

「……父上は……以前の父でないようだ……」

「どういう意味ですか?陛下に何か?」

「……君が去ってから、新しく聖女を召喚しようとしたけど、全て失敗した」

「ええ、それは……聞きました」

アッサラームのシャル殿下とカイエンの話を盗み聞きしましたからね。
< 137 / 204 >

この作品をシェア

pagetop